2018年12月11日

プロローグ

 サンタクロースを信じていたのはいつまでだって話をすると、そこはやはり家庭事情が絡む事になるかもしれないからどうでもいいじゃない、なんて結論になるのかもしれないけれど、でも世間話の一つとしてはちょうどいい話題になるのかもしれない。

 では、俺がサンタクロースをいつまで信じていたかと言われると、恥ずかしながら小学校中学年までのことである。銀座の博品館に家族で出かけた時の話に遡る。あそこは油圧式のエレベーターを採用していてな、乗ると少し匂いがするんだ。……言ったところで、分かって貰えるかどうか分からないのだけれど、ともかく、その博品館にはビリケンさんと呼ばれる縁起の良い人形が置かれていたんだ。大阪の生まれの人間だったら、そこらへんの知識は明るいかもしれないな? ビリケンさんというのは、足を触ると願いが叶うらしいんだ。俺は父親から聞いたその話題を信じて触っていた物だよ。銅像に何の価値も無いのにな。気づいてしまえばそれでお終いかもしれないが、気づいてしまっている前の事は、はっきり言って、思っている事よりも、面白いことかもしれないな。まあ、それはどうだっていい。……ええと、何処まで話したっけ? ああ、そうだ。博品館のビリケンさんの話だったな。そこで俺は当時流行っていたRPGソフトが欲しいってねだったんだ。そうしたら次の日ホテルで目を覚ましたら、プレゼントが枕元に置かれていてな。俺が欲しかったソフトが入っていた訳だよ。そりゃ、喜ぶよな。当時はサンタクロースが居るって本当に信じていたんだからさ。

 そういうわけで、そんなおしゃれなイベントがやってきたかと思いきや翌年に至っては両親から直接プレゼントを貰うというサンタクロースもへったくれも無い受け取り方だった訳で、俺の中でサンタクロースは存在しない理論が構築されてしまった訳だ。

 同時に、テレビで良く見る幽霊やUFOなども存在しないと思い切っていた。そう思い切る原因となったのは父親だった。父親は現実的なものしか信用しない筋がある。それに、俺に言ってくるのだ。テレビで流れているこの映像はデタラメだ、等と。そう言われてしまえば、そんなことを信じることすら無くなってしまうのも当然のことだろう。

 超能力者、幽霊、未来人、UFO、宇宙人……。そういった類いのことをさっぱり信じなくなったのは、中学生ぐらいになってからだと思う。思えば平々凡々な人生を送ってきたものだと思っている。そんな人生で楽しかったのか、と言われると微妙なところだ。それが楽しいか楽しくないかを判断するのはあくまでも自分自身であり、それ以外の人間が勝手に『楽しい』だの『楽しくない』だの判断してはいけないからだ。いや、別に、してはいけないというルールは無かったはずだけれど。

 でも心の中では描いていたはずだ。宇宙人がやってきて宇宙の秘宝を狙うことになるだとか、未来人がタイムマシンでやってきて「この時代は危ない」的なメッセージを聞いたりだとか、超能力者が現れてバトル的な展開になったりだとか。

 でも、残念ながら、そういう連中は居ない。

 あくまでもそいつらは空想の中に留めておいたほうがいい。

 自分がちゃんと高校生活を送りたいのであれば、そうあるべきだ。

 俺はそんなことを思いながら、坂の上にある御所高校に入学し――。



 ――そして、あの同好会の面々に出逢った。



つづく。
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posted by かんなぎなつき at 14:13| Comment(0) | ようこそ、SF同好会へ!

僕と彼女の不思議な日常 5.翌日B


 彼女が、彼女の両親を殺害した出来事。。

 普通なら気づかれなくては成らない事。

 だけれど、今日も僕たちはここに居る。

 それって、どういうことなんだろうか?

 一体警察は、何をしているというんだ?

 分からない。考えたところで何も浮かび上がらない。頭が悪い人間の特徴だ。頭も回らないくせに口だけは良く回る。はっきり言って、それはエゴであり、意味の無いことだ。

 そんなことが分かっているのに、今日も僕は妄言を繰り広げる。勿論、頭の中で。頭の外でこんな会話を続けていたら、そりゃ頭のおかしい人間に思われても仕方が無いこと。

 だから先生の「転校生を紹介します」という言葉に、完全に乗り遅れてた訳だけれど。

「はーい、今日は皆さんに転校生を紹介します。喜べ男子ー、可愛い女の子だぞー」

 そもそも大学で転校生なんて価値、存在するのだろうか?

 親が引っ越したとしても、特に変なこだわりが無ければ、一人暮らしをしてでもその大学に通いそうなものだけれど。

 一番前の扉から入ってきたのは、金髪ポニーテールの少女だった。

 美しい。綺麗だ。というのが、周りが得た彼女の第一感想である。

 この場合は、ファーストインプレッション、そうと言えば良いか?

 ともかく、周りの人間は彼女の美貌に脱帽した筈だ。え? 脱ぐ帽子が無い、って? 言葉の綾だよ、言葉の綾。それくらい理解して欲しいものだね。

 それはそれとして。彼女はチョークを手に取り黒板に書き出した。

 何を? と思う人間は多くない。この場合で書く物と言えば――。

『桐ヶ谷紅葉』

 それが彼女の名前だった。

「わたしの名前は、『きりがやくれは』といいます。紅葉と書かせてくれは、と読みます。間違えないようにしてくださいね?」

 そうして。

 講義の一時間目は新人の桐ヶ谷紅葉とともに受けることになるのだった。

posted by かんなぎなつき at 13:24| Comment(0) | 僕と彼女の不思議な日常

2018年12月10日

僕と彼女の不思議な日常 5.翌日A

 実のところ、友人はあまり居ないのだ。

 人間強度が下がるとかいう訳では無く。

 単純にコミュニケーション不足による結果。

 無愛想な人間が生み出した結果として当然。

「五月蠅い、雄一。別にお前のことを思っていたとかそういう訳では無いから安心しろ。それに、僕にとってはこれが普段通りの事象だからな?」

「はてさて、どうだか。本当にそんなことを考えることがあるのかどうか、また別の話だと思うけれどね。実際、お前は友達が少なすぎるんだよ」

「別に問題無いだろう? 友達が多かろうと少なかろうと、実際問題、お前が心配だぞ? お前の事を覚えてる人間が居なくなるんじゃないかと」

「それは言い過ぎだ。……はっきり言って」

「兎にも角にもお前はもっと友人を作れよ」

「五月蠅い。お前だって多くは無いだろう」

「お前よりかは、多いよ。お前ぐらいだよ」

「何が? 一人で楽しくやれている人間?」

「馬鹿。……友達が少ない人間のことだよ」

「そんなことか。僕は友達が少ないってか」

「……お前、自分で何を言っているのか、」

「皆まで言うな。分かりきっている話だよ」

「……なら良いんだけれどよ。ああ、そう」

「どうしたか? 何か言い忘れた事でも?」

「今日、転校生が来るって話知ってるか?」

「転校生? そんなこと、噂になってた?」

「なってたかもだし、なっていないかも?」

「なんだ、その曖昧な返答は。知らないよ」

「知らない、というのは転校生について?」

「ああ。まったく。皆目見当もつかないね」

 そんな会話をしていたら、あっという間に教室に到着。

 教室に到着した僕たちは、いつも通りの席に腰掛ける。

 とはいった所で、僕たちは前後の席になっているのだ。

 結局の所、一緒の場所まで一緒に行くというのが当たり前のようなことになってしまっている訳だけれど。

 席に座ってから後は、先生がやって来るのを待つだけ。

 特に目立った行為をする事等無いし、するはずが無い。

 だから、僕は友達が少ないのかもしれないな、と思う。

 なぜなら周りは未だに会話を続けているからだ。

 授業が始まるのは、今から後十分ばかしになる。

 つまり後十分の余裕が生まれている、という事。

 それがどれ程価値のある時間であるかという事。

 それはきっと、そこに居る誰もが思わない事だ。

 間違い無く、感傷的になれず、意味の無い事だ。

「……まあ、戯言だよな」

 僕は、ぽつり呟いた。

 思い出したのは、昨日の出来事。

posted by かんなぎなつき at 12:17| Comment(0) | 僕と彼女の不思議な日常