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2019年01月29日
レベルカンストの続きは
posted by かんなぎなつき at 19:09| Comment(0)
| レベルカンストの彼女とレベル1の僕
第一章@
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オンラインロールプレイングゲーム、『アビスクエスト』は、全世界五百万人がプレイする大型オンラインゲームだ。ゲーム内通貨『ダイス』は現実の通貨に換金することが出来るのも大きな特徴であり、レベルカンスト勢の一部はゲーム内の予算だけで私生活も生活出来る、という感じになっているのだ。
そんなオンラインゲーム『アビスクエスト』は、全盛期を常に更新し続けており、今でも月十万人近いユーザーが新規登録し続けているというのだが――。
その『アビスクエスト』は、カセドラルと七つの島で構成されており、彼女たち――剣聖女アリスたちが居る場所が、初心者向け狩り場として位置づけられている『アビス・ファースト』である。
「さあ、じゃんじゃん選んでちょうだい、少年」
「……僕にはエクスという名前があるんだけれど」
「エクスだろうが少年だろうが、私にはどうだって良いことなの! さ、さっさと選んじゃってちょうだい! 貴方が興味を持った依頼に行くことにするから」
机の上に大量に乗せられた依頼票。
それは、アビス・ファーストの受付員が先程用意した依頼票であった。
依頼票を眺めながら、アリスは品定めをしていく。
「ゴブリン退治に、スライム退治に、牧場の夜間警備に……。種類はたくさんあるけれど、やっぱり初心者向けと言ってしまえばそれまでね。さあ? 何か良いものは見つかった?」
「ええと、ちょっと未だ読み切れていなくて……」
「おい、お前」
声が聞こえた。
振り返ると、青い鎧に身を包んだ緑髪の青年が立っていた。
青年は話を続ける。
「さっきから俺たちの依頼票を奪い取って何をしているのかと思っていたら……『お気に入り』の品定めか? 巫山戯るな、こちとら今日の生きる道を求めている人間(ユーザー)ばかりが集まっているんだ。お前みたいなレベルカンスト勢には関係の無い話題かもしれないがな!!」
「……ふむ、つまりこういうことか」
立ち上がり、剣聖女アリスは話を始めた。
「私がやってきて、急に貴方達の仕事の品定めを始めて、それが気に入らない、と?」
「お、おう。そういうことだ」
ゆっくりと、ねっとりと、緑髪の青年に近づいていく。
悪戯めいた笑顔を浮かべながら、彼女はゆっくりと話し始める。
「ごめんなさいね。私としては、直ぐに見つけたいのだけれど。少年がそう簡単に仕事を見つけることが出来ないから。だから、私はその仕事探しの手伝いをしている、といったところかしら? だから、私は悪いとは思っていないのよ」
「そう……自分は悪くないと思い込んでいるところがっ……!」
「だったら、実力で奪い取る?」
ぞわり、と背筋が凍ったような気がした。
剣聖女アリスはさらに話を続ける。
「私と貴方、戦って勝った方に好きな仕事を差し上げましょう。それが嫌なら、『ダイス』の直接入手を望むかしら? 一億ダイスまでなら好きな金額を動かすことが出来るけれど」
「一……億?」
一瞬、何を言っているのか分からなかった。
「一億。それぐらいなら私が動かせる、と言いたいの。勿論、人間の資産には限りが有る訳だけれど」
「一……億……」
「どう? それでも貴方が望むのならば、勝負をしても構わないけれど。私としてはどっちだって構わないわよ。貴方が望むことを、私がしてあげましょう。どう? レベルカンスト勢の私がここまで言っているのよ。貴方も少しは誠意を出してみてはいかがかしら?」
レベルカンスト勢。
一言で言ってのけたが、その単語には、ひしひしと重みが伝わってくる。
『アビスクエスト』には、レベル制度が導入されている。レベル1からマックスのレベルがレベル170。今までのバージョンアップによってレベル上限が少しずつ上がっていった。そして現在、レベルカンストと言われるのはレベル170だと設定されているのだ。
そんなレベル170に居る存在――いわゆるレベルカンスト勢は、現在三十名程居ると言われている。常にログインし続けている人間も居れば、定期的にログインをし続けている半引退気味の人間も居る。レベル150を超えれば自動的にクエストを攻略していく『ルーチン・プログラム』が使用出来るようになるため、仮にログインをしなかったとしても、資産は増え続けていくシステムなのだ。そこまで来れば、もうゲームというよりかは株の運用に近い。
「……う……。きょ、今日の所はこれぐらいにしておいてやる!!」
そう言って。
徐々に集まりつつある人々の輪をかき乱すように、緑髪の青年は消えていった。
それを見て人々もまた消えていく。ただ『お祭りごと』が好きな連中ばかりが集まっていたようだった。
「……ふう。まったく、困るものね。こうやってたくさんの人間がやってくる、というのも。レベルカンスト勢と言われ続けるのも、何というか疲れるものだし」
とはいえ。
レベルカンスト勢になった彼女が引退をすることもまた出来やしなかった。
今まで、ずっとログインし続けてきたのだ。もはや彼女にとって、『アビスクエスト』はルーチンワークの一つに等しい。そんな彼女にとって、『アビスクエスト』を引退するということは人生の趣味(実際には、資産を運用しているので仕事の一つと言ってもいいが)を一つ諦めるということに等しいのだ。
「あ、アリスさん!」
そこで。
エクスの声がアビス・ファーストのオンラインカウンターに響き渡った。
「何か見つかった? 少年」
「こ、これにしようかと思って……」
「うん? どれどれ」
そう言って、見せてきたのは、ゴブリン退治の依頼だった。
別段、彼女が居なくても問題無さそうな任務(クエスト)。だが、レベル1の彼がやるには少々面倒な任務であることには間違い無かった。
「それじゃ、それを受けに行こうか?」
「はい!」
そうして。
レベル1のユーザー、エクスは初めての任務であるゴブリン退治へと赴くのだった――。
posted by かんなぎなつき at 08:29| Comment(0)
| レベルカンストの彼女とレベル1の僕
2019年01月28日
プロローグ サブクエスト受付はこちらから! オンラインカウンター
【あらすじ】
オンラインRPG、アビスクエストには常日頃からボス級モンスター【アビスロード】の目撃情報が絶えない。
そのため冒険者達は自らの戦績を上げるために、【アビスロード】に挑み、ある者は戦績を上げ、ある者は死に至るのだ。
そんなアビスクエストにもレベルカンスト勢は居る。
剣聖女アリス。
そんな彼女と旅をし続けているのは――ログイン数日目の新参者な僕だった。
ファンタジーRPGを舞台に、剣聖女アリスの最強伝説が今幕を開ける!
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オンラインRPG、アビスクエストには常日頃からボス級モンスター【アビスロード】の目撃情報が絶えない。
そのため冒険者達は自らの戦績を上げるために、【アビスロード】に挑み、ある者は戦績を上げ、ある者は死に至るのだ。
そんなアビスクエストにもレベルカンスト勢は居る。
剣聖女アリス。
そんな彼女と旅をし続けているのは――ログイン数日目の新参者な僕だった。
ファンタジーRPGを舞台に、剣聖女アリスの最強伝説が今幕を開ける!
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posted by かんなぎなつき at 23:25| Comment(0)
| レベルカンストの彼女とレベル1の僕