メイド服に着替えて、メリューさんの隣で料理を作っている。修行をしている、とでもいえばいいだろうか。あいにく今日は客も来ないし、たまにはこういうことがあってもいいかもしれない。
少し暇ができたので、キッチンへ向かってみる。すると、メリューさんと少女――リューシュが話をしていた。
リューシュは野菜を切っていた。下ごしらえ、という状態だろうか。メリューさんは鍋を使って何かスープを作っているように見えた。
「あれ、メリューさん。料理の修行はどうなったんですか?」
「料理を教えるより、先ずは細かいことを教えてあげないといけない。下ごしらえに皿洗い、雑用と思えることかもしれないが、いつかは教えるつもりだよ。……だが、今日中に教えないといけないな」
「お願いします!」
リューシュは言って、メリューさんに頭を下げる。
「まあ、先ずは昼飯にするか」
メリューさんはそう言ってまたスープを煮込み始めた。
いったいメリューさんは何を考えているのだろうか、そんなことを思いながら、ただ俺はメリューさんを見つめていた。
昼飯が完成したのはそれから十分後のことだった。掃除をしていたサクラと、今日はお休みだったシュテンとウラもカウンターに集結している。
「へえ、料理の修行ですか」
サクラはリューシュの頭を撫でながら、そう言った。それにしてもサクラは子供に懐かれることが多いなあ。伊達に妹と弟が三人居る家庭で育っていない。
そして今俺たちの前に置かれているのは、スープと塩むすびだった。塩むすびは女性陣には二つ、そして俺には三つおかれている。スープもそれなりの量があるので、それで問題ないだろうという結論に至ったのかもしれない。
「……美味しそう。いい香り」
リューシュはスープの器をもって、ゆっくりとその香りを嗅いだ。
スープには豚肉が入っていて、それ以外にも根菜を中心とした野菜が入っていた。おそらくスープの味付けのベースは、マキヤソースだろうか。
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