2016年09月24日

料理の修行志願?(2)

「はあ、はあ、はあ……。ったく、久しぶりにこんなに走ったぞ。それにしても、このガキ。何でサンドウィッチを盗んだ?」

「いや、そんなことよりどうしてこの世界に入ることが出来たか、ですよ」

 やってきたのはティアさんだった。

「……ティア。どうしたのよ、急に出てきて。もしかして、最近出番が少ないから、張り切っているのかしら?」

「……っ! あなたは、どうしてそういう核心をついたコメントばかり出来るわけ! ……まあ、それはいいでしょう。問題は、その少女です」

 ティアさんは少女を指さして、言った。

 確かにこの少女が問題だらけだ。なぜここに入ってくることが出来たのか、そしてなぜこのサンドウィッチを盗んだのか、いろいろと話を聞かねばならないだろう。


 ◇◇◇


 少女をカウンターの席に座らせて、カウンターの向こう側に俺たちは立っている。

 少女は水入りのコップを両手で掴んだまま、ずっと俯いていた。

「……先ずはお前の名前を聞かせてもらおうか」

「…………ヒューイ」

 ヒューイ。いたって普通の名前だ。

「国は?」

「アルース王国」

「アルース王国か。……グラッセ王国の隣にある、海洋資源が豊富な国だったか」

 グラッセ王国はミルシア女王陛下が居る国だ。ということはあの世界と同じ国、ということか。

 メリューさんの追及は続く。

「何故、この店を知った?」

「……実は夜、母親と一緒にこのお店に入ったのです」

 昨日の夜。

 そういえば昨日の夜はやけにお客さんが多かった覚えがある。やはりボルケイノも何だかんだで知名度が上がってきている、ということになるのかな。まあ、そこに勤務している俺としては、忙しくなることで給料が上がるし、大変有り難い話ではあるのだけれど。

 そして、少女は昨日の夜からの話を、ゆっくりと始めるのだった。
posted by かんなぎなつき at 08:35| Comment(0) | ドラゴンメイド喫茶
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