「いや、そんなことよりどうしてこの世界に入ることが出来たか、ですよ」
やってきたのはティアさんだった。
「……ティア。どうしたのよ、急に出てきて。もしかして、最近出番が少ないから、張り切っているのかしら?」
「……っ! あなたは、どうしてそういう核心をついたコメントばかり出来るわけ! ……まあ、それはいいでしょう。問題は、その少女です」
ティアさんは少女を指さして、言った。
確かにこの少女が問題だらけだ。なぜここに入ってくることが出来たのか、そしてなぜこのサンドウィッチを盗んだのか、いろいろと話を聞かねばならないだろう。
◇◇◇
少女をカウンターの席に座らせて、カウンターの向こう側に俺たちは立っている。
少女は水入りのコップを両手で掴んだまま、ずっと俯いていた。
「……先ずはお前の名前を聞かせてもらおうか」
「…………ヒューイ」
ヒューイ。いたって普通の名前だ。
「国は?」
「アルース王国」
「アルース王国か。……グラッセ王国の隣にある、海洋資源が豊富な国だったか」
グラッセ王国はミルシア女王陛下が居る国だ。ということはあの世界と同じ国、ということか。
メリューさんの追及は続く。
「何故、この店を知った?」
「……実は夜、母親と一緒にこのお店に入ったのです」
昨日の夜。
そういえば昨日の夜はやけにお客さんが多かった覚えがある。やはりボルケイノも何だかんだで知名度が上がってきている、ということになるのかな。まあ、そこに勤務している俺としては、忙しくなることで給料が上がるし、大変有り難い話ではあるのだけれど。
そして、少女は昨日の夜からの話を、ゆっくりと始めるのだった。
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