2016年09月20日

羊使いとプリンアラモード(6)

「ええと、なになに? 『この容器はボルケイノのものだから、食べ終わったら水洗いしておくように。洗わなかったらケイタの給料からその分天引きしておくのでそのつもりで』……、そんなことお客さんに渡すものに入れておくなよ……」

「ほっほ、まあ、彼女らしいのう。まあ、後で洗い場を貸してあげよう。先ずは休憩とでも行こうではないか。……君たちが問題なければ、の話だが」

 俺はその言葉にゆっくりと頷いた。

 時刻は未だ昼過ぎだ。とはいえ、ボルケイノの時間軸ではあまり関係ないけれど。

 そういうわけで俺とリーサも、ヒリュウさんと同じくプリンアラモードを食べることにするのだった。


 ◇◇◇


 プリンアラモードの味は格別、と言っても過言では無かった。

 ヒリュウさんはいつもプリンアラモードを食べている。そういえば初めにボルケイノにやってきたときは、『食べたことのないデザートが食べられると思ったが』ということだった。確かにここは喫茶店だし、ご飯ものよりかはデザート、になるだろう。そういうわけでヒリュウさんは普通にご飯を食べてから、プリンアラモードを食べることとした。そして、そのプリンアラモードを食べて、その味に虜になった。

「ほんとうに、この味は飽きが来ない。素晴らしいものだよ。昔はあまり出歩こうとは思わなかったが、このお陰で麓に降りるようになったからな。ボルケイノに行くには麓まで降りねばならないから、そこだけが非常に面倒な話ではあるがね」

 そう言ってヒリュウさんはまた一口プリンを食べるのだった。その笑顔はまさに子供そのものだった。

 聞くところによるとこの地方での甘味はあまり無く、プリン自体が物珍しいものだということだった。言われてみれば、甘味として売られているのはよく分からないクッキーのようなものだけだったし、軟らかい食感の甘味自体が珍しいのだろう。

「……ふう、美味しかった。やはり、これを食べないと何か上手くいかない感じがするのう」

 そう言ってヒリュウさんは器を机に置いた。
posted by かんなぎなつき at 01:17| Comment(0) | ドラゴンメイド喫茶
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