そこのお得意さんである羊使いのヒリュウさん。
いつも狼を連れてきているヒリュウさんはプリンアラモードを食べている。
今日は、そんなヒリュウさんのお話し。
◇◇◇
「ヒリュウさん……珍しいわね。いつもなら、この時間にやってくるはずなのに」
はじまりはメリューさんの言葉だった。
時刻は午前十時。ボルケイノがオープンしてから一時間。いつもならこの時間くらいにはやってきて、いつものようにプリンアラモードを食べるのだが……。
何か、心配だ。
そして心配なのはメリューさんも一緒だった。
「心配だな。ちょっと、ケイタ。リーサとともにヒリュウさんの家に向かってくれないか? ヒリュウさんも年だし、何かあったかもしれない」
「ヒリュウさんの家ってことは……カルノー山脈でしたか?」
カルノー山脈。
ある世界の、とある国。その中心に位置する巨大山脈のことだ。放牧が盛んにおこなわれていて、ヒリュウさんも代々羊飼いとしてそこに住んでいる。そのカルノー山脈の麓にある町、ボルケイノの扉はそこに繋がっている。
「そうだ。ヒリュウさんはうちのお得意さんだ。だからこそ、心配なんだよ。それくらい解るだろう? それにリーサはあまり外の世界に慣れていない。今後どこかに一人で買い物をしてもらうこともあるだろうよ。私はこの仕込みが忙しいから……頼めるのがケイタ、お前しかいない。解るな?」
そこまで言われては仕方ない。そう思って、俺はリーサとともに出かけるためリーサを呼びに店の奥へと向かうのだった。
リーサと俺の準備が出来たのはそれから十五分程経過してからだった。メリューさんが作ったヒリュウさんへの『お土産』も持っている。何やら特殊な器に入っているようで、ある程度の振動なら吸収してくれるらしい。何だよ、そのオーバーテクノロジーは。
「それじゃ、行ってきます」
そして、俺とリーサはボルケイノの扉をくぐった。
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