2016年09月15日

羊使いとプリンアラモード(1)

 ドラゴンメイド喫茶、ボルケイノ。

 そこのお得意さんである羊使いのヒリュウさん。

 いつも狼を連れてきているヒリュウさんはプリンアラモードを食べている。

 今日は、そんなヒリュウさんのお話し。


 ◇◇◇


「ヒリュウさん……珍しいわね。いつもなら、この時間にやってくるはずなのに」

 はじまりはメリューさんの言葉だった。

 時刻は午前十時。ボルケイノがオープンしてから一時間。いつもならこの時間くらいにはやってきて、いつものようにプリンアラモードを食べるのだが……。

 何か、心配だ。

 そして心配なのはメリューさんも一緒だった。

「心配だな。ちょっと、ケイタ。リーサとともにヒリュウさんの家に向かってくれないか? ヒリュウさんも年だし、何かあったかもしれない」

「ヒリュウさんの家ってことは……カルノー山脈でしたか?」

 カルノー山脈。

 ある世界の、とある国。その中心に位置する巨大山脈のことだ。放牧が盛んにおこなわれていて、ヒリュウさんも代々羊飼いとしてそこに住んでいる。そのカルノー山脈の麓にある町、ボルケイノの扉はそこに繋がっている。

「そうだ。ヒリュウさんはうちのお得意さんだ。だからこそ、心配なんだよ。それくらい解るだろう? それにリーサはあまり外の世界に慣れていない。今後どこかに一人で買い物をしてもらうこともあるだろうよ。私はこの仕込みが忙しいから……頼めるのがケイタ、お前しかいない。解るな?」

 そこまで言われては仕方ない。そう思って、俺はリーサとともに出かけるためリーサを呼びに店の奥へと向かうのだった。

 リーサと俺の準備が出来たのはそれから十五分程経過してからだった。メリューさんが作ったヒリュウさんへの『お土産』も持っている。何やら特殊な器に入っているようで、ある程度の振動なら吸収してくれるらしい。何だよ、そのオーバーテクノロジーは。

「それじゃ、行ってきます」

 そして、俺とリーサはボルケイノの扉をくぐった。
posted by かんなぎなつき at 03:03| Comment(0) | ドラゴンメイド喫茶
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