「何をしたんだ、あの女性に」
「ん。ああ、あれは『サトリフラッシュ』。あれを見た人は一定時間の記憶を失う力を持っている。決して某地球外生命体を確認した人に圧力をかけるようなメンインブラック的な存在では無い。それだけは言っておこうか」
俺はマリナに言われるまま、マンションの駐車場に止まっていた赤いスポーツカーに乗り込んだ。
俺が乗り込んだことを確認して、マリナはそのままスポーツカーを運転し始める。
大通りに出て、そのままどこかへと走り出す。
「……いったい、どこへ向かうんですか」
「神事警察よ。……正直、もうこれ以上あなたの自由意志を尊重することが出来ない」
自由意志。
それはさっき俺が、神事警察から出て行ったこと。それを意味しているのだろうか。
マリナの話は続く。
「正直、さっきまであなたのことをただの一般市民としか認識していなかったよ。めぐみからの説明があったとはいえ、あなたの能力は秀でたものではなかった。別に何者かに襲われるものではないと考えていたからね。だからこそ、あなたのことは監視するだけに留めておいた。……でも、まさか神格級の存在が姿を見せるとはね。もしかしたら、あなたは私が思っている以上に危険な存在なのかもしれない。もちろん、人間にとってではなく、神格級の彼らにとって、ね」
「……神格級?」
「要するに、私と同じように神の名を継いでいる存在、ということだよ」
ふいに声が聞こえた。
振り返ると、後部座席に先ほどの電撃を放った男が律儀に腰かけていた。
「私と……ということは、あなたも?」
「私の名前は、タケミカヅチ。名前だけは聞いたことがあるのではないかな? 雷を司る神の名前だよ。その名前と能力を、僕は引き継いでいる。もちろん神としての神格(じんかく)もある」
「済まない。もう、何が何だかさっぱり解らないのだけれど……。つまり、神の力を手に入れている存在、ということになるのか?」
「近からず遠からず、といった感じかな」
俺の質問に答えたのはマリナだった。
マリナは運転をしたまま、俺に話を振り続ける。
「とにかく、それについての説明もしておきたい。あなたに関しては、それほどの能力があるということは、恐らく『カミツキ』としての力もあるかもしれない。今では適性さえあれば、四分家では無かったとしても『カミツキ』になることができるからね。便利な時代になったものだよ」
「……カミツキって、『神憑き』のことですよね? 確か、人間に神の力を憑かせることで、その力を利用することが出来る、という……」
「その通り。前、私かめぐみか……どちらかが説明したときは、四分家しかその力を持っていない、と言った。しかしそれは、生まれながらにして持っている可能性が高い、というだけ。今ではその適性さえ持っていれば、神憑きになることが出来る。その資格を君は持っている、ということになるのかな」
2016年09月26日
カミツキ:リビルド/タケミカヅチ編(11)
posted by かんなぎなつき at 02:52| Comment(0)
| カミツキリビルド
料理の修行志願?(4)
結局、そのあと少女はその条件を飲んだ。
メイド服に着替えて、メリューさんの隣で料理を作っている。修行をしている、とでもいえばいいだろうか。あいにく今日は客も来ないし、たまにはこういうことがあってもいいかもしれない。
少し暇ができたので、キッチンへ向かってみる。すると、メリューさんと少女――リューシュが話をしていた。
リューシュは野菜を切っていた。下ごしらえ、という状態だろうか。メリューさんは鍋を使って何かスープを作っているように見えた。
「あれ、メリューさん。料理の修行はどうなったんですか?」
「料理を教えるより、先ずは細かいことを教えてあげないといけない。下ごしらえに皿洗い、雑用と思えることかもしれないが、いつかは教えるつもりだよ。……だが、今日中に教えないといけないな」
「お願いします!」
リューシュは言って、メリューさんに頭を下げる。
「まあ、先ずは昼飯にするか」
メリューさんはそう言ってまたスープを煮込み始めた。
いったいメリューさんは何を考えているのだろうか、そんなことを思いながら、ただ俺はメリューさんを見つめていた。
昼飯が完成したのはそれから十分後のことだった。掃除をしていたサクラと、今日はお休みだったシュテンとウラもカウンターに集結している。
「へえ、料理の修行ですか」
サクラはリューシュの頭を撫でながら、そう言った。それにしてもサクラは子供に懐かれることが多いなあ。伊達に妹と弟が三人居る家庭で育っていない。
そして今俺たちの前に置かれているのは、スープと塩むすびだった。塩むすびは女性陣には二つ、そして俺には三つおかれている。スープもそれなりの量があるので、それで問題ないだろうという結論に至ったのかもしれない。
「……美味しそう。いい香り」
リューシュはスープの器をもって、ゆっくりとその香りを嗅いだ。
スープには豚肉が入っていて、それ以外にも根菜を中心とした野菜が入っていた。おそらくスープの味付けのベースは、マキヤソースだろうか。
メイド服に着替えて、メリューさんの隣で料理を作っている。修行をしている、とでもいえばいいだろうか。あいにく今日は客も来ないし、たまにはこういうことがあってもいいかもしれない。
少し暇ができたので、キッチンへ向かってみる。すると、メリューさんと少女――リューシュが話をしていた。
リューシュは野菜を切っていた。下ごしらえ、という状態だろうか。メリューさんは鍋を使って何かスープを作っているように見えた。
「あれ、メリューさん。料理の修行はどうなったんですか?」
「料理を教えるより、先ずは細かいことを教えてあげないといけない。下ごしらえに皿洗い、雑用と思えることかもしれないが、いつかは教えるつもりだよ。……だが、今日中に教えないといけないな」
「お願いします!」
リューシュは言って、メリューさんに頭を下げる。
「まあ、先ずは昼飯にするか」
メリューさんはそう言ってまたスープを煮込み始めた。
いったいメリューさんは何を考えているのだろうか、そんなことを思いながら、ただ俺はメリューさんを見つめていた。
昼飯が完成したのはそれから十分後のことだった。掃除をしていたサクラと、今日はお休みだったシュテンとウラもカウンターに集結している。
「へえ、料理の修行ですか」
サクラはリューシュの頭を撫でながら、そう言った。それにしてもサクラは子供に懐かれることが多いなあ。伊達に妹と弟が三人居る家庭で育っていない。
そして今俺たちの前に置かれているのは、スープと塩むすびだった。塩むすびは女性陣には二つ、そして俺には三つおかれている。スープもそれなりの量があるので、それで問題ないだろうという結論に至ったのかもしれない。
「……美味しそう。いい香り」
リューシュはスープの器をもって、ゆっくりとその香りを嗅いだ。
スープには豚肉が入っていて、それ以外にも根菜を中心とした野菜が入っていた。おそらくスープの味付けのベースは、マキヤソースだろうか。
posted by かんなぎなつき at 01:07| Comment(0)
| ドラゴンメイド喫茶
2016年09月25日
カミツキ:リビルド/タケミカヅチ編(10)
「き……、貴様! 神事警察か。何をやってくるかと思えば、神を捕まえようと、裁きを加えようとする愚かな組織が、何をするのか! 人間は神が作り出したというのだぞ!!」
「あのねえ……。別に自分が偉いと思うのは仕方ないけれど、だからといって何をしてもいいというわけではないでしょう? ほんと、あれから増えたよね。そういう驕る神。神は人間が信じなければ、正確に言えば信者の数に応じて神格化するその度合いが変わっていくというのに、それを理解していないのだから」
神に対して説教を垂れている。
これだけ見ると、すごい異端な光景に見えるけれど、しかしながら、マリナは普段もこのような様子なのだろう。
「……神に説教をするとは、貴様、余程死にたいようだな?」
「いいや、私は死にはしないよ。……封印されるのはお前のほうだよ」
そうしてもう一発、封霊銃を撃ち込んだ。
「何度撃っても無駄だ。封霊銃など、人間の開発した技術に降伏するわけがあるまい!」
「じゃあ、そこまで弱らせればいいだけだ」
それを聞いて、オオワタツミは振り返る。
しかし、それよりも早く、オオワタツミが立っていた水たまりに電撃が走った。
「が、がああああああああっ!?」
電撃を受けて、オオワタツミは息が上がっていた。倒れることはしなくとも、体力は弱ってしまったらしい。
「まさか、貴様が人間の手に落ちているとはな……!」
「別に人間の手に落ちたつもりはないよ。昔から彼女とともに行動しているだけだ」
そこに居たのは、鹿のようなお面を被った男だった。背中には二本の刀を携えている。そして、彼の身体の周囲にはピリピリと静電気のようなものが纏わりついていた。
男は笑みを浮かべる。
「それにしても、海の神と恐れられた君がこんな内地に居るとはね、驚きだよ。いったい何を目的に行動しているのかな? まさか、人間を襲撃するためだけに、ここまで出てきたわけではないだろうし」
「……貴様に言う筋合いは無い」
ズドン、という音がした。
それは、再び封霊銃の弾丸がオオワタツミに命中した音でもあった。
しかし今回はさっきまでのように命中しても意味がないような状態ではなく、ゆっくりとその弾丸に吸い込まれていった。
そうして最後には弾丸だけが残される形になった。
そして女性は、何が起きたのか解らないという感じで、床に崩れ落ちていた。
「君、これをかけていたまえ」
渡されたのは、サングラスだった。
取り敢えず、言われたとおりにかけておく。
マリナは女性に近づいて、そのまま何かを取り出した。それはボールペンのような何かだったが――、その直後、眩い閃光がそのボールペンから発せられた。
女性は暫くぼうっとしているように見えたが、すぐにゆっくりと立ち上がると、
「あれ……、私、何をしていたんだろう……?」
「大丈夫でしたか」
女性に声をかけるマリナ。マリナの顔を見て、首を傾げる。
「あなたは……?」
「ああ、ちょっとここのマンションの人間に用事があったのですが、通路にあなたが倒れていましたので。恐らく立ちくらみの類でしょう。お気をつけてください」
そう言って立ち去って行った。マリナの言動、行動に違和感を抱くことなく女性は自分の家へと戻っていった。
「あのねえ……。別に自分が偉いと思うのは仕方ないけれど、だからといって何をしてもいいというわけではないでしょう? ほんと、あれから増えたよね。そういう驕る神。神は人間が信じなければ、正確に言えば信者の数に応じて神格化するその度合いが変わっていくというのに、それを理解していないのだから」
神に対して説教を垂れている。
これだけ見ると、すごい異端な光景に見えるけれど、しかしながら、マリナは普段もこのような様子なのだろう。
「……神に説教をするとは、貴様、余程死にたいようだな?」
「いいや、私は死にはしないよ。……封印されるのはお前のほうだよ」
そうしてもう一発、封霊銃を撃ち込んだ。
「何度撃っても無駄だ。封霊銃など、人間の開発した技術に降伏するわけがあるまい!」
「じゃあ、そこまで弱らせればいいだけだ」
それを聞いて、オオワタツミは振り返る。
しかし、それよりも早く、オオワタツミが立っていた水たまりに電撃が走った。
「が、がああああああああっ!?」
電撃を受けて、オオワタツミは息が上がっていた。倒れることはしなくとも、体力は弱ってしまったらしい。
「まさか、貴様が人間の手に落ちているとはな……!」
「別に人間の手に落ちたつもりはないよ。昔から彼女とともに行動しているだけだ」
そこに居たのは、鹿のようなお面を被った男だった。背中には二本の刀を携えている。そして、彼の身体の周囲にはピリピリと静電気のようなものが纏わりついていた。
男は笑みを浮かべる。
「それにしても、海の神と恐れられた君がこんな内地に居るとはね、驚きだよ。いったい何を目的に行動しているのかな? まさか、人間を襲撃するためだけに、ここまで出てきたわけではないだろうし」
「……貴様に言う筋合いは無い」
ズドン、という音がした。
それは、再び封霊銃の弾丸がオオワタツミに命中した音でもあった。
しかし今回はさっきまでのように命中しても意味がないような状態ではなく、ゆっくりとその弾丸に吸い込まれていった。
そうして最後には弾丸だけが残される形になった。
そして女性は、何が起きたのか解らないという感じで、床に崩れ落ちていた。
「君、これをかけていたまえ」
渡されたのは、サングラスだった。
取り敢えず、言われたとおりにかけておく。
マリナは女性に近づいて、そのまま何かを取り出した。それはボールペンのような何かだったが――、その直後、眩い閃光がそのボールペンから発せられた。
女性は暫くぼうっとしているように見えたが、すぐにゆっくりと立ち上がると、
「あれ……、私、何をしていたんだろう……?」
「大丈夫でしたか」
女性に声をかけるマリナ。マリナの顔を見て、首を傾げる。
「あなたは……?」
「ああ、ちょっとここのマンションの人間に用事があったのですが、通路にあなたが倒れていましたので。恐らく立ちくらみの類でしょう。お気をつけてください」
そう言って立ち去って行った。マリナの言動、行動に違和感を抱くことなく女性は自分の家へと戻っていった。
posted by かんなぎなつき at 05:57| Comment(0)
| カミツキリビルド